「なん、で…」

氷つくあたし。
また心臓が可笑しな音をたて始める。

幻覚でも見てるんだろうか。

ちょっと眠そうな、でも笑顔でそこに立つのは、彼。

初めて聞く声は想像より少し低い。

「ちょっ、俺ストーカーとかじゃないからね」

顔を堅くして一言も発しないあたしに苦笑いしながら近づいてくる。

「ココ、俺んち」


そういって彼の指差す先には最近できたアパート。
とんでもない偶然とまさに灯台元暗しに空いた口が塞がらない。

あっでも、と
彼は続けた。

「火曜日と金曜日。俺が学校早い日の朝見かけるじょしこーせーがカワイーなぁとか思ってたらやっぱり変態?ついに声かけちゃったしな」

と頭を掻くかれにあたしは混乱するばかりだ。

そしてもうこれ以上ドキドキしないと思っていた心臓は『期待』という潤滑油を得てさらに動きを早めていく。