「だから別に、なんでもないって言ってるだろう」


「何でもない、なんて言葉がオレに通用すると思う?」


ぶっきらぼうな俺の物言いにたじろぐことのない辺りは、さすが幼なじみ。


あくまでも追及の手を弛めないユウキには悪いが、元気のない理由なんて言えるわけがない。


『お前に恋慕してるんだ。

寝ても醒めてもお前とヤりたいとばっかり考えていて、寝不足なんだ。

だから一発ヤらせてくれ』

なんて言えるだろうか。


言えたところで、一生絶交状態になるか、変人扱いされて疎遠になるか。


とにかく今の『幼なじみ』という関係が崩れ去ってしまうことだけは確かだ。


いっそ俺かユウキのどちらかが女だったら良かったのに。


いやでも男同士だからこそ、高校生になった今もこの『幼なじみ』という地位に甘んじていられるのだ。


もて余す欲望さえなければ、つかず離れずの心地よいキョリ。