おれは町はずれに一人いた。ぼんやりと川岸に座って川を眺める。雨で芝はまだ少しぬれている。月に照らされている石を川に投げようとしたが、石を持つことが出来ない。
 対岸の人に声をかけるが、反応はない。この前までのサインを求められ、人が勝手に自分の周りに集まってくる生活が懐かしい。
 よく周りを見回すと泥にまみれた縄がある。誰とも接する事ができない。何にも触れられない、触れられるのは自分だけというのでは生きていくには不可能である。死ぬしかないのか、俺は。
 ああ、縄さえも手にすることが出来ない。手が縄を透き通っていく。おれは、自殺もできないのか。
 あの時、もし、外のおれの姿に触れなければ……。
 倫理のテキストが足元で、ページが風で捲られる。

……日本の文化をことわざから分析してみると、まず、代表的なことわざに後悔先に立たずがあり……

 その日、俺は、川岸のベンチで眠りについた。