「ありがとう」

それに口をつけた翼さんを見ながら、ちらりと横目で湯月くんを見る。

しかし湯月くんは、毒見役にされたことに、まったく気付いてないようだった。

よしよし、こっちも大丈夫。

一人うなずいていると、楽屋に杉田さんと達郎兄ちゃんが入ってきた。

「大丈夫か翼」

そう気遣う杉田さんに、翼さんは笑顔で応じた。

「大丈夫です」

「30分後に撮影再開だそうだ」

もしかしてと思ったけど、撮影中止にはならないのね。

スケジュールが押しているっていうのは、ホントみたい。

「それじゃ我々は外を見張ってます」

達郎兄ちゃんがあたしたちに手招きをしながら楽屋のドアを開けた。

わらわらと、固まりながら、外に出る。

「なんで外に出たの?」

楽屋ドア横の壁に寄り掛かった達郎兄ちゃんに、あたしは訊いた。

「翼さんは動揺してる。それを落ち着かせるのは、杉田さんの役目だ」

なるほど。