達郎兄ちゃんは校門に寄り掛かりながら携帯をいじっていた。

「よぉ、カホ」

飄々とした口調は相変わらずだ。

それでいて憂いを含んだ瞳も相変わらず。

「よぉ、じゃないわよ」

あたしたちと達郎兄ちゃんに向けられた視線を感じながら、あたしは言った。

「なんで学校に…」

そう言いかけたところで、手にしたままのあたしの携帯から、メールの着信音がした。

『近くまで来たから校門で待つ 達郎』

メールにはそうあった。

「ま、そういうことだ」

「そういうことだ、じゃないわよ!」

近くまで来てるなら最初から言えっての。

「よ、久しぶりだな湯月くん」

人の話を聞けー!

その一方で、声を掛けられた湯月くんは、直立不動で立っていた。

「お久し振りです!」

見事なまでの九十度のお辞儀。

湯月くんは達郎兄ちゃんに対して畏敬の念を抱いている。

卒業前の問題解決の糸口は、達郎兄ちゃんが手紙の差出人を湯月くんだと突きとめた事だ。