「どうするの、旭さん」

両手を口もとにあてて、オロオロする湯月くん。

なぜにそんな乙女の仕草をするんだあんたは。

本格的に付き合いはじめてわかった事だが、湯月くんには明らかに乙女要素がある。

すっごくイイ人なんだけど、彼氏としては若干、物足りないというか…ええい、話が脱線してばかりだ。

「別にとって喰われるわけじゃないし、普通に会うわよ」

あたしは立ち上がった。

「いったん家に帰ってから、返信するつもり」

その時、窓際にいたクラスメートたちの会話が耳に入った。

「ねぇ、あの校門に立ってる男の人、誰かしら」

「黒スーツなんてカッコいいよね」

黒スーツという言葉に、あたしと湯月くんは顔を見合わせた。

「もしや…」

あたしたちは教室を飛び出した。