「兄さんは、いないよ。」

悲しむわけでもなく怒るわけでもなく、
感情がないような機械じみた声。

『いないよ』

それって、もとからいなかったの?
それとも、いなくなった?

なんて聞けるわけない
あたしは笑って「いないのかーあたし兄ちゃんほしかったからさー」
なんてしょうもない嘘をついた。

あたしは、嘘で出来てるから。
嘘で固められてしまったあたし。
それをはがしたら何か残るのかな。

本当の、あたしとか?

そんなものとっくに
どこかへ逃げてしまったかもしれない。

「俺もほしかった」