「入れ」

バタン──ガチャリ。

連れてこられたのは図書室。背中を押されて、無理矢理中に入れられた。
鍵を締められた音がしたため慌てて振り向くと、鬼の形相の奴がいた。

「おい…てめぇ。あんな台詞を吐かれてこっち気分悪いってこと、分かるよな?」

ジリジリと近付いてくる黒い影。

「ち…違うし!あんなこと言うつもりじゃなくって…!」

そう言いかけたとき、奴の手が挙がった。
(な…殴られる!)

そう思った瞬間、殴られた痛みはなかったが、腰の辺りに机がカツンと触れた。

「ちょっ!!」
思わず机の上に倒れ込んだあたし。すかさず奴はあたしを押さえ込んだ。

つまり詳しく言うとあたしは今両腕を掴まれて。おまけに膝を股の間に挟み込まれ、みっともない格好だということ。

「誰がどこででも腰ふってる、だ?お前こそ今知らねえ男に股開いてんだろうがよ!」


「あ…相澤進!!」

急に叫んだ名前に驚く様子の男。その拍子に緩んだ手を振り切って、頭の後ろにあった本棚から大百科を引っ張り出し──降り下ろした。もちろん男の頭に。

「…いっってえぇっ!!」

突然の痛みに悶絶しかける男。そしてあたしは叫んだ。


「知らねえ男って言ったから…知ってるよ!名前!」


「は…はぁ?」
頭を抑えながら間抜けな顔をしている。

「相澤進。あんたの名前」