離婚が成立しても、彼からの連絡が執拗に来た。
 携帯を取らないと実家の家電に連絡が入った。

 職場にも現れた。
 その都度、傷が増えていった。

 離婚して数年経った頃、一人の男性と再開した。
 一番最初に知り合ったのは、インターネットの地元チャット。

 拠り所が欲しかっただけだったのかもしれない。
 それでも年下の彼に惚れていった。

 リストカットの跡を見ても何も言わなかった。
 知り合いに同じ病気の人が居ると言っていた。
 自然と同棲を始めた。

 鬱の症状がひどく、何も出来ない日も多々あったが、怒ることはなかった。
 体調が悪い日は、食事を作ってくれた。

 腫れ物に触るような事はなく、普通に喧嘩もした。
 彼と会って『もうリストカットはしない』と約束。

 その後初めて腕を切りつけたのがばれた時、凄い形相で怒られた。
 心配されてるんだなと思えた。
 頼りになるだけではなく、頼ってきてくれる。

 飴と鞭の使い方がとても上手い。
 きっと手のひらで踊らされているような状態なのだろう。
 それでも今はこの人と一緒に過ごしたいと思えている。

 リストカットもあれからしていない。
 きっと跡は消えない。
 それでも彼と居る限りは、この傷跡が増えることも無いだろう。

 そう、信じたい。