キョン。 胸の中で呟く、いきなり過ぎて今更実感がわいてくる。 初めて見た時から奪われた気持ち。 彼女の歌う姿。 体中の細胞に共鳴する歌声。 思いだせばそれだけ、イロの気持ちは高ぶっていき、幸せになる。 ついさっきまで手の届く距離で二人は声を交わしていたのだから。 『ありがとう』 誰にでもなく 目を閉じて イロは 心のなかで お礼を言った。