朝日が昇る色、夕焼けの消えてゆく光り、夜の月に照らされる梢。
季節から時間から天候から天上は景色を変える。
イロはButterflyのライブに行くまで常に被写体を自然の中で見つけようとしていた。

友人の誘い、興味の薄い音楽、付き合い半分、下がるテンション、興奮する友人、人によって創られたひかり。

奪われた。

イロはそこに心を奪われた。
音を生み出すひかり、ひかりから生まれるmelody。

無意識。

自然にポケットからデジカメを出しシャッターをきった。けれど足りない。再びポケットに戻す。 隣の友人、周りの客とは身動きができるほど距離はなくて、リュックにしまったお気に入りの一眼レフを取り出すのに肩なり肘がぶつかっていく。
かまってられなかった、今取り出す瞬間にそのひかりが違う色に変わってしまいそうで。
「オイ、何してるんだよ。」
正面の男が振り返り睨む、男も会場の空気と同じく気持ちが高ぶっている。
そんな男を確認した左目を閉じレンズ越しに彼女の姿をイロは確認した。

 瞬く連続のフラッシュ。
何人かの客がそれにきづいたが、圧倒的にステージのひかりが客席を魅了していた。
そんなカメラのフラッシュなんて周りの人間達の目や汗に反射されるものと、かわらないかのように流されていた。
イロの興奮は果てしなくて、夢中になった。
次の瞬間は彼女の視線はこちらを向き、次は涙のような汗が光り、目元を隠す、
次は・・次は・次は次第にシャッターを押す事より、彼女の姿に夢中になる。
友人が肩を揺さぶるのもきづかない。
ただレンズ越しの彼女と
耳と肌で感じる歌声に全てを注ぐだけになった。

そして近く見えていた姿は、衝撃から暗闇、罵声から元の景色に姿を戻した。