優衣といる時間が増えるのは素直に嬉しいと思う。

しかしあの、自身が欲に負けそうになった瞬間が頭の中で延々とリピートされるのだ。


まだ、手を出すわけにはいかないというのに。




「…まだ、ちゃんと言ってねぇし…聞いてねぇんだから」




しっかりしろ、と自分に言い聞かせるよう何度も繰り返す。



今日のデートの最中に優衣が泣いているのを見つけた瞬間。

あの時、龍之介は自身が優衣に抱いているこの感情が間違いなく恋愛感情であると確信していた。

否、確信せざるをえなかった。



買った飲み物を投げ捨てて彼女のもとに走って抱き締めたのも、柄にもなく彼女の涙を拭ったのもそれ故だという自覚がある。