かなり長いこと足を運んでいない場所だが、行けない場所ではない。




「んじゃ、行くか」




若干照れがないわけではないが、優衣の行きたい場所にと言った手前、それは無理だなど言えるはずもなく。


龍之介は優衣の感触のいい頬を撫でながら小さく笑う。

すると、目の前の優衣は頬を更に赤く染めながら、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。



トクン トクン



静かに静かに浸透していく優衣の笑顔。




(…捕まるのも時間の問題かも…)




すっとその大きな掌で優衣の目を覆い隠す。優衣の狼狽える声がしているが、手は離せない。




(…今、絶対ぇ顔赤い)




大輪のような兎の笑みに狼の心が揺れた春先の屋上。









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