昨夜の電話とは違う。 機械越しではなく、直に届いたその声。 それは薬のようにゆっくり、しかし確実に優衣の体に染み渡っていく。 「りゅ、くん…龍くんっ」 「ん」 「龍くん…!」 「優衣…?」 それがあまりに心地よくて。 優衣は求めるように龍之介の名前を繰り返した。 この学校で、どこよりも空に近いこの場所。 誰にも邪魔されない青の下は、始まったばかりの二人だけの世界。