やがて、……この空気に耐えられないオレは口を開いた。
「疲れたな」
最初は、そんな言葉。
「そうですね」
リンは少し弱い声で、でもはっきりと答えてくれた。
「でも」
でも?
「楽しかったですよ?」
ああ。
「そうだな」
「来週から」
今度は、リンが言った。
「来週からも部活はありますよ」
そうだな。
「ちゃんと、来ますよね?」
もちろんさ。
「こういう時は指切りでもするものなのか?」
ちゃんと来るさ。
「指切りしないと、来られないんですか?」
いつもの嫌味なリンだった。
「家、遠いんだったら送ろうか?」
リンは考えているようだったが、
「そこまでしてもらう必要はないですよ」
と言った。
まあ、本人がこう言っているんだから大丈夫だろう。
眠くなったので、リンに寄りかかろうとしたんだが。
「やめてくださいね」
きっぱり断られてしまった。
「そういえば」
「?」
「リンが歌った曲……」
「……『Regret』ですか?」
「多分、それ」
はい、とうなずくリン。
「気に入りました?」
「ああ……まあ。あとで調べてみようかなって」
最近CDを買うことも少なかった。
それに。
リンのことを、もっと知りたいと思ったから。
バスを乗り換えてからも、会話はあまり続かなかった。
だが、バスに揺られている感覚は、不思議と心地がよかった。



