本当にメンドクサイと思うのは、状況が変化してオレがそれに慣れるまでのこと。

オレの環境適応能力は高くない。

だから変化を嫌う。

変化がメンドクサイのだ。



オレがこのままでいたいと思えるような場所。

それを見つけてしまった。

それはもう慣れたのと同じ。



オレは、そこにいたい。

そこは、

「前、座るぜ」

「どうぞ」

バスでリンの前の席。

オレが見つけた、オレの居場所。

前からそうだった。
だが、今は違う。



リンがいると、安心する。



――ほんと、バカみたいだよな、オレ。

「まあ、確定要素が多いからだろうな」

「……話のつながりが、まったく読めませんが」

「こっちの話……。いや……」

この返答はリンに申し訳ないな。

「実はオレ、ものすごい発見をしたんだよ。感動した」

「そうですか」

リンは昨日と同じ。

本に目を落としながら、多分聞いている。

「いつかオレに、なんでこの席に座るのか、って聞いたよな?」

「昨日の朝の話ですけど」

昨日か。

「それは、オレがいつも通りここに座ると安心するから座るんだよ」

「昨日と同じことを大仰にしゃべりますね」

「いやいや、オレは『いつも』ここに座るんだ。リンがそこに座るように」

「いやいやいや、だから昨日と同じことをですね」

うーん、違うって。