「意味は……わかりますか?」

意味……は、ええと、憶えている。

「――時は常に移ろいゆくもの、だっけか」

「はい、よく出来ました」

そして、

「その言葉――諸行無常、憶えておいてくださいね」

諸行無常。

オレなりの解釈で開いてみると、諸々の行いは常では無い。

どんなものでもいずれは消えてなくなってしまう……世界の理だ。

それにどんな意味があるのかわからないが、

「きっと憶えておくよ」

大切なことなんだろう。





「さて、そろそろ行きましょうか」

リンが言った。

「もう行くのか?」

オレはもう少しここにいたかった。

「諸行無常、ですよ」

それでも。

「盛者必衰――いつかは衰えるんだから少しの盛りを楽しもうぜ」

「それもそうですけど、私が説教したんだから行きますよ」

何だよそれは。

「……人はずっと同じ場所にいられないのだから」

「?まあ……」

リンの横顔はどこか名残惜しそうだった。





行きはバスだったが、今はゆっくり歩いている。

後ろに流れる景色――というより物陰から新しい景色が現れている。

そしてそのどれもが初めてみるものばかりだった。

オレのインドア加減をなめるな。

……それにしても。

「道合っているのか?」

並んで歩くリンに尋ねる。

「……ナオキさんがわかって歩いていたんじゃないんですか?」

……。

「海はあっちの方角」

「焦りませんね」

「焦っても仕方がないからな」