「……私は小さいころからこの公園に来るのが好きでした」
木漏れ日はリンに不規則な明暗を作る。
「……いいところだな」
なんとなく雰囲気で。
けれど居心地がよかった。
木のベンチ。
花壇。
噴水。
それらが溶け込んだ静謐。
そう、ここはどんな疲れも癒してくれる、どんな嫌なことでも忘れさせてくれる。
そんな気がした。
娯楽なんてものはない。
ここには何もない。
しかし、この公園は自然を享楽することができた。
自然――森羅万象――この世にある事象すべての存在を受け入れてくれる場所だと思う。
肌にひんやりと涼しい風が吹く。
「問題です。どうして私がここを好きになったでしょう」
リンが歩くとなりについて、当てもなくぶらつく。
リンの質問の答え。
それは――。
「わからん」
「その方がナオキさんらしいですが、ちゃんと考えないといけませんよ」
「むう……」
とりあえずここは直感でいこう。
「家から近いから!」
「遠いです。考えなさ過ぎですよ」
「頼む!答え!」
メンドクサイオレ。
「――こんな私がいてもいいんじゃないかって思えるから」
ここは、世界のどんなものでも優しく包み込んでくれる、オレも思った。
惜しいな、オレ。



