七月八日。
――雨が降った。
オレの願いは見事に打ち破られた。
バス通学と言っても傘がいらないわけじゃない。
むしろバスの中に傘を持ち込むのがメンドクサイ。
バスに乗り込み、リンに挨拶をする。
「おはよう」
「おはようございます」
リンはいつもと同じようにいた。
「……天気が悪かった」
「はい?」
「昨日短冊に『明日天気になあれ』って書いたのに叶わなかった」
するとリンの顔が曇る。
「幸先悪いですね」
まったくだ。
藤沢が乗り込んできた。
「……天気が悪かった」
「ごめん、ナオキ。話の脈略が見えないよ」
「幸先が悪かった」
「だからさっぱりわからないよ」
困惑している藤沢にリンが、
「昨日七夕だったんですよ」
と告げる。
「……ああ」
藤沢納得。
「何でわかるんだよ」
「ナオキのことだから」
……どうやらオレには理解者が多いらしい。
いくら雨が降ってもバスに乗る人間は減らない。
当たり前だが、雨が降っただけでけだるさが何倍も跳ね上がる。
メンドクサイ。
「天気予報が言うに、明日は晴れるらしいですよ」
残念なことに明日は土曜日、休みだ。
「雨が降るなら明日がよかった……。雨の日は動きたくない」



