「それにしても、慣れない夜更かしはするもんじゃないな」

布団の中で本を読んでいたせいで、

「体のあちこちが痛い」

「そりゃあそうだよ」

なんだか藤沢と話が合っていない気がする。

そこでリンが、何かに気付いたように、はっとする。

「ち、違いますよ、藤沢さん!」

なにが違うんだよ、リン。

オレにはよくわからないが、

「……リンがあんなのを渡すから悪いんだ」

「あんなの!?あんなのってどんなの!?」

藤沢がやたらテンション高い。

「だから違いますって!」

リンが必死に否定する。

「……んぅ?」

オレにはよく意味がわからない。

「ナオキさんも何か言ってください」

何かって、何を?

言葉の引き出しを探る。

……ああ、うん、あの本は面白かった。

「興奮して眠れなかった」

「絶対わかってて言ってますよね」

結局最後まで、オレには意味がわからなかった。

「もっと頑張らないといけないな」

「うん、頑張ってね」

「だから違います!」





それから授業を全部寝て、リンに怒られた。

それで、部活に行ったら持って来ていたリンの本――昨日の続きを読んだ。

部活メンバーには、らしくない、と言われたが確かにそう思う。

オレには少し難しかったが、それが楽しかった。

短い言葉に込められた意味を考えるのが楽しかった。

――まだ慣れていないオレには、リンが込めた意味なんて気にしなかった。