「藤沢に言ったこと、憶えてないのか?」
リンも藤沢もきょとんとしていた。
だから、言ってやる。
「――こういうときはごめんなさいじゃなくて、ありがとう、だ」
するとリンは、少し笑って、
「ありがとうございます」
と言ってくれた。
「ああ」
オレも答えた。
しかし、大変なカッター訓練だった。
「お昼は、いいんですか?」
リンが言った。
それはオレたちが聞くことだろうに。
「まあ別に食いに行けないわけじゃないさ。リンは?」
「私は大分良くなったので食べに行こうかなって」
一時の症状はかなり悪かったが、今はいつもどおりのリンだった。
「午後の予定はどうする?山歩きって結構大変かも」
「多分大丈夫です」
「無理するなよ」
「……ぐうたらなナオキさんより、体力ありますから」
「なっ……!」
そのとき、救護室の扉からノック音が聞こえた。
誰だろう?
「どうぞ」
救護の人が入室の許可を出す。
引かれる扉から現れたのは――カッターでリンの隣に座っていた女子だった。
「……大丈夫?」
……ああ、そうか。
この子もリンのことが心配で来たんだな。
リンは少し戸惑った風だったが、
「……はい」
と答えた。



