部屋を出て、洗面所に向かう。

――宿泊施設はいくつかの棟に分かれている。

棟は通路――主に階段で構成されている――で繋がっている。

この棟の三階層のうち洗面所は二階だ。

ちなみにオレたちの部屋は一階にあたる。



蛇口から吐き出された水を手ですくい、自分の顔にたたきつける。

……冷たい。

だが目が覚めた。

「……ふう」

一息つく。

さて、今日が始まった。

カッター訓練、山歩き……。

『カッターとかいろいろ……みんなで協力するんだね』

入部三日目、カナコが言っていた。

『舟の上は地獄絵図!』

キョウスケの発言からは楽しいとは思えない。

やべッ、行きたくなくなった。

……まあ、あきらめるしかない。

自分が映った鏡を見つめる。

「……行くか」





一旦部屋に戻り、オレたちは集会場に向かった。

「……朝から階段なげえ」

昨日も往復した階段。

昨日と違って足元が良く見えるが、それでも階段がつらいことには変わらない。

……昨日、オレとリンは手をつないでここを下りたんだよな。

今思うとよくあんなことが出来たもんだ。

恥ずかしすぎるだろ。



「……ああぁ……」

いきなりとなりにいた藤沢が倒れる。

「大丈夫か?」

「て、低血圧が祟って……」

藤沢は低血圧だったのか。