「ご、ごめんなさい! 後でお返しますから!!」


私の狼狽ぶりを横目に見て、初めてニッコリ微笑んだ彼。


「あ、別にそういうんじゃなくて」

「で、でも……」

「いいよ、たかがビニール傘だし。……この間、本当に具合悪そうに見えたから心配だったんだ。でも元気そうで安心した」


「じゃあ」と軽く手を上げて、彼はコンビニを出ていってしまった。


雨に打たれても、平然と。


それからまた、金、土、日曜と雨が降らない日が続いていた。


その間、失恋と雨による陰欝(いんうつ)な気持ちも晴れていき、今朝、ようやく元彼との思い出の品を、家庭ゴミとして出してきたところだった。