「はぁ……」


「どうしたの、稜。元気なさすぎ」


朝、教室へ着くと同時に机に突っ伏したうちを聖華が鋭く捉える。


起きてすぐケータイを確認したけど、栗崎から連絡は一つもなかった。


あんな夢を見てしまったせいもあるのか、栗崎の事が頭から離れない。


「どうかしたのってば」


「……」


聖華にも、話す気にはなれない。


「許嫁の件、どうなったの?」


「そこ触れる……?」


弱気な声を出したうちに、ただならぬ気配を感じ取ったのか、聖華はそれ以上何も言わず小さく息をついてどこかへ行った。


今はひとりでいたい。


そんな気持ちを察してくれたのかな。


ほんと、聖華はいいやつだよ。


一番うちを理解してくれるのは、聖華だけだと思うんだ。


こんなにうちを気にかけてくれるのは、聖華だけだと思うんだ。


だからこそ、今、栗崎とのことを話すわけにはいかない。


もうちょっと頑張って、どうにもならなくなったら、聖華に頼ってみようと思う。