「どうでもいい事だよ」

「どうでもいいって?」

「だから、大した事じゃないよ」


咲坂さんが、安藤さんの制服のシワを覗き込みながら何度も質問する。

その度に、安藤さんはめんどくさそうに質問をかわした。



なんでだろう……。

安藤さんの言葉がチクチクと胸に刺さる。


『どうでもいい事』


そんなの、当たり前のことなのに……。




俯きかけたわたしの隣で、美鈴が元気な声を出した。


「ねえ、今日は一緒に体育館の外のベンチでお昼食べようよ!」



美鈴の言葉に、咲坂さんと安藤さんの会話が止まる。


「ねっ! 食べよっ?
早く買わなきゃ売り切れちゃうよ~?」



美鈴に背中を押され、わたしは売店でサンドイッチを買って、安藤さんたちと中庭へ向かった。


その時、遠くから聴こえてくる一人の声がどんどん近付いてきている事に気づいた。