「あの、今朝はありがとうございました。
制服……シワが出来ちゃってすみません」
なんか……わたし変。
もっと言いたい事があったはずなのに、上手く口から出てこない。
「別にいいよ……」
制服を受け取った安藤さんは、シワを見ないまま袖に腕を通した。
「今朝って? おまえら何があったの?」
咲坂さんが安藤さんの顔を覗き込むと、安藤さんは「別に」とだけ答えた。
やっぱり安藤さんは咲坂さんに言ってなかったんだ。
美鈴の言うとおり……。
「なあ、何があったんだよ。美鈴は知ってんの?」
「え? うん、知ってるよ」
「じゃあ知らないのは俺だけ!?」
自分を指差す咲坂さんの顔が、なんだか寂しそう。
「春香ちゃん??」
「あの……咲坂さんだけが知らないっていうより、美鈴にしか言ってないので……」
「うわ~、なんかすげー気になる」
クシャクシャッと髪を掻いた咲坂さん。
ごめんなさい。
別に秘密にしているわけじゃないけど、『穴にハマった』って、ここでは言い難いんです……。

