「うん。男だよ」


そう言った大地くんの手に力が加わり、わたしは唾を飲み込んだ。



わわっわわわっ……!!


真剣な眼差しの大地くんの顔が近づいてくる。



ダメッ……!!

ダメ~~~~!!


「大地くんっ、違う、違う!! 
そうじゃなくて、もう少し距離があった方が良いってことっ!!」



大地くんの顔が見れなくなったわたしは、瞼をぎゅっと閉じて叫んだ。


その途端、肩にあった手の感触が消え、大地くんの声が聴こえた。




「はい、良く出来ました」



え……?



「大地くん?」


「春香ちゃん、ちゃんと自分の気持ち言えたじゃん」


「う……うん」


「ごめんね。俺、これからは気をつけるから」


「大地くん……」



大地くん、今わざとわたしを困らせたんだ……。


「一歩前進だね」


「ありがとう」



にっこりと優しい微笑みを見せた大地くんは、何かを見つめるように空を見上げて叫んだ。



「よ~し! 俺もガンバろ!!」



その声は、今まで聞いた事がないくらい気合いが入ってて男らしかった。




大地くんが何に苦しんでるのか、

わたしにはまだわからない。



けど、応援したいって思った。


わたしに出来る事があるなら、全力で力になりたいって思ったんだ。