唯一の救いであった一条の光は幸せへの導きなどではなく、さらなる悲しみへの誘いだった。


 本当に、忘れてしまいたい。何もかも全部、全部全部。そう思うのに、忘れてしまうのは怖い。


 救われることのない想いを抱え、その重さに崩れ落ちてしまいそうになる。――それでも、朱都から離れるためには歩き続けるしかないのだ。