何も言えなかった。








慰めの言葉すら、あいつには意味がないと思ったから。







俺が思っていた以上にあいつの心の殻は、傷は大きいものだったからだ。









あいつは俺と自分を同じだと言った。






確かにお互いを重ね合わせていたのは同じだろうが、決定的に違う部分がある。









俺の場合、由香は生きていた。





死の淵をさまよいながらも生きていてくれた。









けど、あいつは違う。




気づいた想いも告げることも出来ずに、長倉 知聡はこの世から去っていった。









どれだけ願っても、会うことはできない。




触れることはできない。





言葉を交わすこともできない。










俺は一体、あいつの為に何ができる?





どうしたらあいつの殻を割ることができる?








どうしたら…―。