千景くんは幼なじみ

「そ…か。あの子から聞いた事あんの?ワタルの話」

「う…ん」

「はあっ…。そっ…か」

ちーちゃんは、ガックリ肩を落とし私にしなだれかかる。

「ちょっと、重いよ」

体重がかかり、うずまきの壁を背にした私はちーちゃんとの間に挟まれ、窮屈。

私が押し返しても、お構いなし。

「もー、いいや。なら、バレたついで?」

私の左手首を、ちーちゃんの右手が掴む。

「きゃ、バレたって…何が?」

何の事やら、さっぱりわかんないよ。だって…、

梓からは、ワタルくんの個人名は出ていないんだから。

「えー?オレが、あの子の友達に…襲われかけたコト、聞いたんだろ?」

…はいっ!?襲われかけたぁ?

「…え?」

「情けねーだろ。笑った?」

「え…と」

笑えるも何も、知らないし。そんな話…。

黙ってちーちゃんを見ていると、私の手首を持つ手に、キュッと力を入れる。

「あいつらが出会った去年の花火大会。ワタルがナンパすんのなんか初めて見てさ、感激で…二人だけにしてやった。

そしたら、何でか一緒にいた子に…オレが気に入られたみてーで」

ゴクリと唾をのむ。

ちーちゃん。

もしかして、その人とキス…したの?