「……おかえり」



そう言いながら
リビングのドアを開ける


「おぉ。起きててくれたんだ」


8年前と変わらない笑顔で
横たわっていたソファーから
顔だけ起こしたあなた


「話があったからね」


同じように笑顔で言えなくなったのは
いつからだろう…


「……話し?」


「そう。とりあえずお風呂入ったら?」


とくに驚く素振りも見せず
首をかしげるあなたは
そんなに嘘が上手な男ではなかったのに


「んじゃ、そうするかな」


ソファーから立ちあがり
ネクタイを緩めながらリビングから出て行った