急いで腕を引っ張ると、一気に空気が抜けた風船のようにしゅるしゅると席に座り込んだ。

「・・・さて、修学旅行の件ですが」

何もなかったかのように授業が再開され、怪獣はやっと目を覚ました。

「修学旅行ってどこだっけ?」

「tokyo!東京!大阪!」

東京くらいで何騒いでるんだろうと思う。といっても俺たちはこんな田んぼに囲まれた田舎に住んでいるんだから騒ぐのも無理はないのかもしれない。

「拓真ー!あきばはら行こうねー」

「・・・秋葉原ね」

蒼以はいわゆる、幼なじみなんだけど。
俺の他にも幼なじみは三人いる。
それが、さっき言った奴らなんだけど。

「自由時間どこ行く?」

「やしぶっしょ、まじぱねえから」

「は?お前渋谷行ったことあんだっけ?」

「ない、妄想」

きっとみんな蒼以が好きなんだと思う。
それが『恋愛感情』じゃなかろうと、こんな手の焼く女の子を俺らは見たことがない。
うるさくて、騒ぐのが大好きで、そんな手がかかる女の子。

「・・・旬斗はどこに行きたい?」

そんな顔で笑われると、勘違いする人が続出すると思う。
罪なのは、本人が何も思っていないということ。

「・・・、アルタ」

「どこだよそれ」

修学旅行まで、あと二日。