いつだってあたしはそうだ。
『いいえ』が言えなくて物事を上手く収めようと相手の思い通りになる。
嫌なのに『はい』とばかり言ってしまう。

溜め息を大きくすると、蒼以の影に誰かの影が重なった。
顔を見上げるとそこにはゲーム機を手にしながらこっちを見る男。
ゲーム機で顔が見えない。まぁ誰かは想像がつく。
ピコピコピコピコ・・・。うるさいなー、と思いながら彼を見る。

「ねー、どうせ拓真でしょ?」
そう言うとそいつはゲーム機をパタンとたたんで笑った。
「そう。拓真。あおちゃんなんで泣いてんの」
「んー、ちょっとね」
あおちゃん、彼がそう呼ぶのには理由がある。

早瀬拓真。あたしと同い年、そして小学校からの友達。
ゲーム大好き、フィギュア大好き、アニメ大好き・・・
とにかく内気でいじめられていたところを助けてやった。
それから中学、高校とずっと一緒。
っていうかこいつは何故屋上に・・・。

「あおちゃん、暇ならあそぼーよ」
「またマリオ?やだ飽きた」
「じゃあアニメイト行こ」
「えー、別にいいけど」
「やったね」
そんな会話をしていると、勢い良く屋上のドアが開いた。