「ハァ……」

その日の夜、テレビを見ながらため息をつく。


「ったく、ため息まき散らすな……また千鶴ちゃんか?」


「その千鶴ちゃんっての、マジやめろよな」


「なんだ嫉妬か。まだ告白はしてねーのか?」


「は?!な、何言って……」


もう何も言う気がなくなった。

実際嫉妬してるし、告白だって出来てない。


「あのさ、俺のクラスに「前田」って奴がいるんだけどさ……」


隼人はソファーに座りだし、俺に話を始める。


「だからなんなんだよ」


「明日……千鶴ちゃをデートに誘うんだと」


「はぁ?!何でお前の学校のやつが?」


「何でも、学校帰りにいつも見かけるらしくて、そいつ、一目惚れしたんだと」


あり得ない。

そんな事あってたまるかよ。


「お前、何で止めなかったんだよ」


「止める?俺が?」


隼人は笑いながらそう言った。


「何笑ってんだよ」


「俺になんの権利があって前田を止めなきゃいけないんだよ」


……権利?


「好きになるのに、いいもダメもないだろ?前田が千鶴ちゃんの事「好き」って言ったんだ。あいつが告白しようと、デートに誘うと、前田の自由だろ」


……自由?


「ただ俺は、男はお前1人じゃない。千鶴ちゃんに言い寄る男はこれからもどんどん出てくるかも知れないぞって忠告してやってんの」


隼人は俺の肩に手を置き、『お前がそれを運命って思ってんなら、その先の運命を切り開くのもお前自身だぞ』って言って部屋へ行った。


やっぱ隼人の言うことは、認めざるを得ないことばかりだ。


俺は1人、何も言えないままソファーにただ座っていた。