俺は部屋に行く途中に考え事をしていた。

やべー俺、嫉妬までするようになってる。

ダメだ。

藤沢とはそうじゃないだろ!俺。

付き合ってるわけじゃないけど、特別な関係にあるんだよ。

それだけで、十分じゃないのか?

人を好きになるって、こんな感じだっけか?

ああ……それさえも忘れそうだ。


考え事をしながら階段をあがり、俺は重要な事を忘れていた。

そしてそれに気づいたのは、部屋のドアノブを回そうとした時。



そういえば俺。

ちょっと待て俺。

何で部屋に連れ込もうとしてるんだ?

やばい。変なやつと思われてねーか?

でもそうだとしたら藤沢もついて来ないか。

いやいや藤沢は俺の気持ちなんて知るわけねーから、着いてくるか。

なんて悲しいこと言ってんだよ俺は!

ってか、部屋に入れてなにするんだ俺は。

学校の話?兄貴の話?最近の映画や音楽の話?

冗談じゃないぞ俺!


「夕斗、君?」


「え……あ、ごめん」


ずっとドアノブを握ったままの俺を不思議そうに見ている藤沢。


もうこなったら意地だ。


――ガチャ。


「さ、入って」


「お邪魔します。わぁ、キレイにしてるんだね」


「ま、まぁね。その辺に座って?」


「うん。あ……アルバムがある。見てもいいかな?」


「ああ、そんなものでよければ」


よかった。


普通に過ごせそうだ。