今一番会いたかった人が目の前に居る。



「ねぇ、夕斗君……大丈夫?」

俺を心配して、俺に傘をさしてくれる藤沢。



「兄貴……やってくれるじゃん」

俺はそう呟き、本能のままに藤沢を抱きしめていた。


「え……ゆ、夕斗君……?」


兄貴、俺決めたよ。

決めた。

やっぱ俺……藤沢にもうあんな思いはさせたくない。

笑顔だって、曇らせたくない。


「ごめん、藤沢」


「夕斗君、どうしたの?何か、あった?」


「疑ったりしてごめん。信じてやれなくてごめん」


俺は藤沢を解放し、肩に手を置き目を見て続きの言葉を口にする。



「これからも友達……いや、親友として。兄貴の事で悲しむことがあれば慰めあいたいし、藤沢が泣きたいときは俺の胸をかして、藤沢が笑いたい時は一緒に笑う」


雨に打たれる俺の姿を藤沢は不思議そうに見ていた。


「夕斗君……」


「藤沢、兄貴に言われたって話してくれたよな?『別れ』と『出会い』の話し」




『もし、藤沢が俺と別れても、藤沢は、必ずまた誰かと巡り会う……』



藤沢は、コクっと小さく頷く。


「その出会いが俺なのかなって……俺、兄貴が藤沢に出会わせてくれたんだって、今ではそう思うんだ。だから俺は、この出会いを信じたい。こんな俺ダメかもしれないけど、藤沢が兄貴を想う気持ちと、そんな藤沢の支えになりたい俺の気持ちは、絶対誰にも負けない」


「……夕斗君」


俺は、ハッと気づき、藤沢の肩から手を離す。


「あ……その…今のは、変な意味じゃなくて……その傷つけちゃったから、せめてもの……償いっていうか」


やべー俺、なんか告ってるみたいじゃんかよ。

急に恥ずかしくなって後ろを向く俺に、そっと傘を差し伸べてくれた。

そして藤沢は、そのまま俺に言った。



「……親友、よろしくお願いします。私も、この出会い、信じてみようかな。京介がくれた出会いなら」




そんなことを言う藤沢の声は、何だか楽しそうな言い方だった。


「おう」


恥ずかしい、俺。やべーよ。