「ハァ…ハァ……兄貴」


藤沢宛の手紙を内ポケットの中に入れ、どしゃ降りの雨の中を走り、兄貴の墓までやってきた。


「兄貴、手紙読んだぜ。マジ自分勝手。ってか届くの遅いんだよ…俺、藤沢のこと傷つけちまっただろ?」


兄貴の墓の前で膝をつき、兄貴に叫ぶ。


「マジ自己中、弱虫、どんだけ弱すぎなんだよ!俺の兄貴はこんなに弱くねーぞ!」


なぁ、兄貴!

ーードン!ドン!

「答えてくれよ!兄貴!」


答えてくれるはずもない石を叩き、訴える。

わからない。

どうしていいか。

だって俺はもう藤沢を傷つけた。


けど兄貴……



「俺、まずは謝りたいんだ藤沢に。今更かもしれないけど謝りたいんだよ!けど…今すぐ会いたくても藤沢んちわかんねーよ」

俺は、兄貴の墓に手をつき、思い切り叫ぶ。


「兄貴が俺たち会わせてくれたんだろ?……なら会わせろよ!藤沢に!今すぐ藤沢に会わせてくれよ!」


ハァ……ハァ。


涙。とまんねー。

何やってんだ俺。

こんなことしても無駄なのに。







「…夕斗…君?」


どしゃ降りの雨の中、石に打たれた雨音の中に聞こえた声。

聞き覚えがある声。

今、会いたい人の声。

俺を「夕斗君」って呼ぶやつは一人しかいない。

俺はその人を見て、小さく息を漏らす。






「…藤沢」