『どうしたんですか?じゃありませんよ!あもう始業式始まっているんですよ?先生も、こんな場所でお説教してないで、あなたが居ないと、式は成り立ちませんよ?』
『ちょ、ちょっと神崎先生まだ説教が!!』
生徒指導の先生の背中を押し、急がせる神崎先生。
『説教なら私がやっておきますから、あなたは挨拶があるでしょう』
『わかりました、わかりましたよ!早く連れてきてくださいよ!』
『はいはい、わかりました!』
千鶴と神崎先生は、生徒指導の先生の背中を見送った。
『ふぅ……やっと行った』
神崎先生は、チラッと千鶴を見た。
『あ……す、すみません。遅刻……』
とっさに目をそらす千鶴。
『はは!怒らないよ俺は!』
高笑いをして、すっきりした顔で千鶴の顔を見る神崎先生。
『え?』
『いやー俺もよく遅刻したもんだよ』
『そうなんですか?』
『朝、弱くてね』
高笑いの次は苦笑いをし、千鶴との会話に色々表情を変えていく神崎先生を見て、ますます千鶴には愛おしい人となった。
『……ふふ』
『今、笑った?笑ったでしょ!』
『わ、笑ってませんよ!』
『本当かー?』
千鶴の顔を確かめるようにじーっと見つめ、また笑顔を作る神崎先生。
『ま、いいけど!君、藤沢千鶴さんでしょ?』
『何で私の名前…』
『今日から君の担任の、神崎京介です。よろしく!!』
千鶴には、夢にまでみた出来事だった。
この出来事から、千鶴と神崎先生が特別な関係になれたのは、そんなに遅くはなかった。