◆兄貴の彼女◆




「いやいやいや、笑えないって」

苦笑いしか出来ない。


「消印がないのにポストに入ってたから、もしかしたらって思って、兄貴が前住んでたアパートの不動産に、電話したんだ」

「で?なんて……」

「つい最近借りる人が決まって、畳の入れ替えをした時に畳の下から出てきたものらしい」


じゃ……これは、兄貴が亡くなる前に俺たちに書いた手紙だって言うのかよ。

わざと、畳の下に入れたのか?

時期が来るのを待って?


「で、その不動産の営業の人が、ウチのポストにわざわざ朝早くに入れてったらしいよ。起こしちゃ失礼だと思ったからだと」

「…………」

「ハァ。俺たちだけじゃない。父さんと母さんの分もある」


何も言えずに、ただ手紙を見つめる俺に、ため息混じりで続けて話す隼人。



「あと……」

「……?あと、なんだよ」


とっても何か言いづらそうな顔をしている。


「あとひとつ、手紙があったんだ」

「え?」

「これ」




差し出された手紙を見た俺は、目を見開き何度も確認した。

そして徐々に、胸の痛み、不安、罪悪感……すべてが込み上げる。