「ねぇ、夕斗」


美佳は立ち止まり、俺の名前を呼ぶ。

振り返ってみると、美佳は俺を見ずに言った。


「謝りたい事があるの」

「何?」

「夕斗との約束破って、藤沢さんに言っちゃったの」


それを聞いた時、嫌な鳥肌が立った。


「お前まさか……」

「悪気はなかったわ」

「なんて言ったんだよ」


俺は、またあの不安と怖さが襲いかかってきた。


「これ以上夕斗を巻き込まないでって……夕斗と藤沢さんが最後に話した放課後の日に」

「……何やってんだよ…お前」

「ごめん夕斗」


藤沢は俺だけじゃなくて、美佳にもそうやって言われたのか。

俺の責任だ。

俺が美佳達に話すのが早すぎたんだ。

3ヶ月、俺はそれを知らずにいたのか。


「確かに、美佳が言うように藤沢が本当に兄貴の彼女かどうだったかなんてわからない。けど俺は……藤沢を信じたかったんだ」

「私は!夕斗が……好きなの」


このタイミングで告白。


「ごめん美佳、俺はお前をそういう風には見た事ない。でも……お前の事は信じてたのに」

「夕斗……」


俺は何も言わずに前に向き直り、歩き出そうとした。



――バッ!