藤沢は、一人夜道を歩く。
そこへ前から美佳が姿を現した。
「藤沢さん」
「……本庄さん」
「ちょっと、いいかな?」
藤沢は、黙って美佳の後を歩いた。
「藤沢さん、先に謝るわ。今まで、結構夕斗と藤沢さんの行動を見てきたの」
「え?」
「屋上で話してたり、お兄さんのお墓に一緒に行ったり、今も……公園で話してたよね?」
「…………」
美佳は、夕斗を守るのは私なのって必死で、藤沢はこの時点で、美佳が夕斗好きなんだって察知する。
「夕斗には絶対言うなって言われてたけど、あなた……京介さんの恋人だったって聞いたわ。藤沢さん、これ以上夕斗を巻き込まないで!」
少し声を荒げて言う美佳に、藤沢はゆっくり答える。
「本庄さん、安心して下さい。私はもう夕斗君に迷惑はかけないって、さっき言ってきたばかりなんです」
「え?」
「こうやって、夕斗君の周りの方たちにも迷惑がかかるって分かったから」
そして藤沢は、美佳にお辞儀をしてその場を去った。
「藤沢さん……」