俺は、再び兄貴の墓の前に来ていた。

兄貴……兄貴……。


辺りは、真っ暗。

まるで今の俺の心の中みたいだ。


俺は、兄貴の墓の前で崩れ落ちた。

「兄貴……教えてくれよ」


答える事のない石に、俺は必死に話かける。


「なぁ、兄貴。藤沢は、兄貴の彼女なんだよな?兄貴が俺と藤沢を出会わせてくれたんだよな?」


辺りは、風に揺れる木々の音と、俺のむなしい質問だけが聞こえる。


「なあ!兄貴!答えてくれよ!」


なんで……なんで……。

何も言ってくれないんだよ。



俺は、兄貴の墓にもたれかかって、しばらく動けずにいた。



「俺もう、わかんねーよ」




藤沢にウソをつかれてるかもしれない事が不安なんじゃない。

それがすべてウソだったときに、俺の中での藤沢の存在が意味をなさない事に不安を覚えたんだ。

たぶん俺はこの時すでに……。



藤沢を違う目線で見ていたのかもしれない。