俺の兄貴、神埼京介は半年前に亡くなった。
まだ27歳だった。
自殺……だったらしいけど、後でわかった事は病気でもあったみたい。
俺は兄貴が死んでから、週に一回は兄貴の墓に足を運んでいた。
理由はない。
ただ、兄貴に会える唯一の場所だから。
兄貴は、大学入学と同時に家を出て、神奈川の高校で教師として働いていた。
会えるのは年に1回くらいだった。
そんな兄貴にもう会えなくなるって現実を、受け止めたつもりだけど、まだどこかで受け止められてない。
俺は兄貴を尊敬していた。
けど、ただ一つ尊敬出来ないのは、自殺したってこと。
兄貴、そんな弱い人間だったのかよ……。
俺は毎日、そう思っている。
「お兄さんのアパートの荷物、もう全部受け取って来たの?」
「ああ。結構前にもう全部受け取った」
「そっか」
美佳も、結構兄貴に遊んでもらっていた。
兄貴が死んだってわかった時も一晩中泣いていた。
美佳と兄貴の話をすることはほとんどなくなった。
こうして、兄貴のところに行く時だけ話をする。
「私、水汲んでくるから先に行ってて?」
「わかった」
美佳が水を汲みに行き、俺は先に兄貴のところに向かった。