俺様先生と秘密の授業【完全版】

「甘いか?
 俺。
 加月ん家の事情知ってるから。
 連絡を、親父さんじゃなくて、兄貴の方にしたんだぜ?
 しかも、少し前に会った時は、就職したって聞いたしな」

 俺って賢い!

 と。

 続けそうな早瀬倉先生に、あたしは頭を抱えた。

「だから、そこ、認識不足っ!」

「……は?」

「……兄貴が就職した先。
 お父さんの会社だし」

「げ」

「しかも、今日は、何の日か知ってる?
 ……例の追悼式があるんだよ?」

 そんなあたしの言葉に。

 早瀬倉先生は、一瞬。

 脳天気そうな顔に、暗い影を落とすと、クビを傾げた。

「それ……今日だったのか?
 俺は聞いて無いし」

「兄貴と先生は、もう進む道が違うから。
 もう、あんまり呼び出したくないって」

「……ふうん」

 先生は、複雑そうな表情をして、ため息をついた。

「そか。
 残念だけど仕方ねぇな。
 でも、そんな配慮が出来るヤツなんだから、別に妹の用事で呼び出したって、何も、問題なんか……」

「だから、センセは甘いって言うのよ!」

 言ってあたしは、無事な方の指先で長い自分の髪をイライラしながら、くるくる巻いた。