俺様先生と秘密の授業【完全版】

 副総長を断った、って言う岸君が。

 今、どんな風に天竜組と関わっているのか判らないけれど。

 それでも。

 こんな道で出会うヒトの中では、比較的友好的な相手らしい。

 壁際に追い詰められてはいても、余裕の表情(かお)があった。

 岸君は、もう一度、軽くため息をつくと言った。

「実は、オレ。
 面倒事に、巻き込まれててさ。
 その流れで、狼の上着を着てたり」

「はぁ?
 ……ん、だよ。
 そりゃ!?」

 岸君の言葉に、天竜組は、ますます険悪な雰囲気になったけれど。

 当の本人は、にこっ、と。

 自分を追い詰めているはずの不良グループに、笑った。

「それで、悪いんだけど。
 君たちにオレのお願いを、聞いてほしいの」

「なんだとコラ!
 どうして、オレたちが、手前ぇの言うことなんざ聞かなけりゃなんねぇんだよ!」

 そう、叫ぶヤツらに岸君は、微笑みの形を変えた。

 気のせいか。

 完全に草食系だったはずなのに。

 実は雑食だった、みたいな。

 少しは、お肉だって食べる、っていう表情(かおつき)だ。