俺様先生と秘密の授業【完全版】

「でも!」

「オレ……っ!
 本当に、何もできない莫迦なヤツだけどっ!
 加月さんの前では、臆病者でいたくないんだ……!」

 心配するあたしにそう言うと。

 岸君は、きっぱりと背を向けて、歩き出す。

 夕暮れが近づき。

 人が多くなって来た、繁華街に。

「こんなことしか、出来なくて、ごめん。
 それに、上着は。
 元通りには返せないかも」って言いながら。

 もと通りには、返せないって?

 岸君は服が破れるほど、殴られる覚悟をしているってこと!?

 どうしょう!

 余計なことして、ごめんって。

 謝るのは、あたしの方なのに……!

 結局何も出来ないまま。

 あたしは、引きずられるように、岸君の後を歩いて行くしかなくて……


 そして、とうとう。

 狼の皮をかぶった羊に。

 興味を持った、肉食獣は。

 そんなに待つことなく、すぐにやって来ちゃったのよっ!