俺様先生と秘密の授業【完全版】

 残念過ぎて、涙が出そうになった。


「これで満足?」


 沈黙の狼の上着を着て。

 今までに増して、静かな声になった岸君に。

 リーダーは、容赦なく言った。

「まだだ。三周は?」

「本当に、私をこのまま、歩かせる気?」

「もちろん。
 オレらは、女と一緒に、後からついて見張ってるぞ!
 ごまかしたら、コイツがどうなるか……」

 そう言って、リーダはあたしの背を押した。

 や……だっ!

 強く押されて、転びそうになったあたしを、岸君は、しっかりと、支えた。

 そして初めて、きりり、と睨む。

「加月さんに手を出したら、承知しないよ?」

 でも。

 返って来るのは、笑い声で……

 岸君は、とうとう声を荒げた。

「オレをこんな風に歩かせて……
 しかも、ついて来たら、絶対後悔するぞ?」

 その、意外にしっかりとした岸君の声に。

 クラスメートたちは、一瞬顔を見合わせて、もっと大きな爆笑になった。

「後悔?
 出来るもんなら、させてもらおうじゃね?
 俺たちゃ、お前がヤンキーに絡まれている間に、加月を置いて、さっさと逃げる。
 どうってことねぇよ。
 さあ、暴走族の、岸君。
 お散歩の時間だよ」