俺様先生と秘密の授業【完全版】

 とりあえず、自分のコトに余裕が出来たから。

 もっと立場の弱い、誰かをかばってあげたいって思うのは。

 ……あたしのわがままなのかな?

 他人の不幸に勝手に押し掛けて。

 あたしは、もう大丈夫だけど、君は平気? って親切そうに聞く、なんて。

 本当は、性格の悪いヒトがやるみたいでイヤだったけれど。

 それでも。

 あたしは、クラスメートにイジメられている岸君を、放っておけなかったんだ。

 ここで細かくしゃべって、正体がバレたら意味ないし。

 自分が岸君を気にする「理由」を、話せる所まで話して、岸君を見上げると。

 やけに、真面目な瞳があたしを見ていた。

「な、何よ!」

「……いや、加月さんも、本当は大変だったんだな、って」

「今は、大変じゃないもんっ!
 それより、自分の心配をしなさいよねっ!」

 なんだか、岸君が、あたしを見つめる視線がとても、恥ずかしい。

 半分照れ隠しに、叫ぶように言うと。

 岸君の口元が笑っているように、見えた。

 初めて見る。

 なんだか、すごく、優しい感じの笑顔だ。

「……岸、君?」

 戸惑うあたしに岸君は、穏やかに言った。