俺様先生と秘密の授業【完全版】

「……その、包帯だらけの手だって。
 私が、あの人たちに、やられているのを見て、止めてくれたのよね?
 ……痛かったでしょうに」

「……」

「ね? どうして?」

 本当は付き合っているわけでもないのに、判らないわ、と。

 岸君は、首を傾げてあたしを見る。

 その前髪の隙間から見える視線が、思いのほか強くて。

 あたしは、どきり、とした。

「や、やあね。
 別に、そんな大した意味なんてないわよ」

 なんとなく、岸君の瞳と目を合わせるのが嫌で。

 さりげなく見えるように視線を外しながら、あたしは言った。

「小学校や、中学校のトキ。
 あたしも、クラスメートに仲間はずれにされてたから……
 同じことされているヒトを見るのが、我慢できないだけ」

 そう。

 学区制度とか言って、小、中は地元の学校だったから。

 世間一般の家とは、ちょっとずれているウチの事情は、みんな丸わかりだったし。

 ウチが、怒らせたら怖い家って言うのも、みんな良く判ってる上。

 あたしか女の子だから、直接暴力を受けることはなかったけど。

 集団で無視されたり。

 靴や、教科書が無くなることも多かったんだ。