俺様先生と秘密の授業【完全版】

 まずは、猫背矯正(ねこぜきょうせい)から!


 ぐぎぎぎぎっ!


 なんて。

 岸君の背中をぐいぐい押したら、とうとう彼は悲鳴を上げた。

「いたたたっ!
 わかった!
 わかったよ!!
 背中は、私が自分で伸ばすから、加月さんはもう押さないで!」

「本当? 真面目にやる?」

「やるわよ。本当よ。
 ……だからさ。
 私の質問にも、真面目に答えてくれる?」

 質問?

 なんだろ?

 いつになく真剣になった、岸君の口調に。

 あたしは、なんとなく、身構えた。

「……なによ?」

「はっきり言って、私、すごく、ドンくさいじゃん?
 猫背で、みっともないし」

「まあね」

「髪、ぼさぼさの上。
 いつもうつむいているから、顔のつくり、っていうか。
 表情だってあんまり、わからないはずだし」

「そうね」

 ……なんだ。

 岸君。

 実は、自分のダメな所をちゃんと判ってるんじゃん。

 そう思いながらうなづいたら、岸君が小さくため息をついた。

「なのに、なぜ。
 加月さんは、私の世話を一生懸命、焼いてくれるの?
 みんな、私たちが付き合ってるって言うくらい真剣に」

「……」